テクノロジーはありとあらゆる業界に浸透しており、教育業界も例外ではありません。毎日の仕事、コミュニケーション、そして考え方に至るまで、ジェネレーティブAIのような人工知能（AI）テクノロジーは、学校や授業の進め方にも進出し始めています。

教育者や学生が、どうすれば授業をより魅力的なものにできるか模索している中、このテクノロジーはその課題を解決しようとしています。それがどんな効果をもたらすのかを知る前に、そもそもジェネレーティブAIとは何なのかを理解しましょう。

ある論文によると、ジェネレーティブAIは下記のように定義されています。

「ジェネレーティブAIとは、（i）ディープラーニングモデルを活用して、（iii）複雑で様々なプロンプト（言語、指示、質問など）に応じて、（ii）人間らしいコンテンツ（画像、言葉など）を生成する技術として定義できる。」

これらのツールにプロンプトを与えれば、アウトプットを生成してくれます。

それが教育関係者にとって、どういう意味合いがあるのでしょうか？

今回は、授業で活用が進むジェネレーティブAIを取り上げ、この刺激的な新しいテクノロジーの可能性と課題について解説します。

授業でジェネレーティブAIを活用する際の懸念点

ジェネレーティブAIには、教育業界への影響への不安がつきまといます。このテクノロジーについて、教育関係者が抱いている課題をいくつかご紹介します：

盗用の可能性

これらのツールは、インターネットのあらゆる場所からコンテンツを収集するため、あらゆるトピックスに関する論文やレポートを数分で作成することができます。学生は高い評価を受けるために安易な方法で成果物を求めるようになり、その結果、努力もしないで勉強をすることになりかねません。

本来はカンニングのようなものですが、今はTurnitinやZeroGPTのようなAIと盗用発見ツールがたくさんあり、こういった問題を特定できます。

創造性の欠如

アイデアを生み出すため、あるいは課題に取り組むために、こうしたAIを搭載したツールを頼りにすることは、自らの思考プロセスをアウトソーシングしていることになります。これは教育者が望むことではありません。また、時間の経過とともに創作意欲が失われていくかもしれない。

さらに、このテクノロジーへの過剰な依存は、チーム活動に参加しなくなる恐れがあるため、コラボレーションやコミュニケーションスキルの構築にも悪影響を及ぼします。

一方、こういったテクノロジーを遠ざけることで、学生にも影響を与える可能性があります。これらのツールは、優れた文章や グラフィック コンテンツを生成することができるため、ジェネレーティブ AI の長所を活かして、学生の能力を試す機会にもなります。

これまでの学習方法は、暗記が中心で応用が利かないため、生徒がAIをどう活用するかは、生徒に任せるのではなく、むしろ教育者が決めるべきことなのです。

ジェネレーティブAIの倫理観

ニューヨークやシアトルの多くの学校では、不正行為を恐れ既にChatGPT (最も人気のあるジェネレーティブAIツールの1つ)を禁止しています。しかし、禁止したところで問題は解決しません。学校のサーバーで禁止されているテクノロジーでも、生徒たちは他で利用する手段を見つけることでしょう。

問題は、これらのツールが不正確なアウトプットを提供する可能性があるという事実に気づいていないことです。これらのツールは2021年までのデータのみで成り立つため、時として信頼性の低い、偏った、有害な情報を与えることがあります。だからこそ、教育関係者はAIを無視するのではなく、AIリテラシーを高めていくことが重要なのです。

ジェネレーティブAIを授業で使うメリット

さて、問題点をいくつか見てきましたが、ここでは、授業でジェネレーティブAIを取り入れるメリットを紹介します：

興味を与える

新しいものを授業に取り入れるときは、いつもワクワク感があります。しかし、ジェネレーティブAIは単なるおもちゃではありません。ELSA SpeakのようなAIを搭載したツールは、対話的でダイナミックな学習体験を提供できるので、これまでの手法では難しかった学生の興味を高めることができます。

リアルタイムなフィードバック

AIを搭載したツールを使って適切なデータに基づいて学習すれば、すぐにフィードバックを得ることができます。これらのツールは、生徒が苦手とする分野を知ることができ、その課題への対処法をアドバイスするのに役立ちます。そのため、より短期間で学生のレベルアップを図ることができます。さらに、教師は詳細な学習レポートにアクセスすることで従来の指導方法を変え、生徒一人ひとりに合ったサポートを提供することができます。
例えば、ELSAでは、生徒の発音をリアルタイムでフィードバックすることで、すぐに発音を改善することができます。

創造性と論理的思考力の向上

多くのAIツールはインターネット上の膨大なデータにアクセスできるため、複雑なテーマをより深く理解していくことができます。さらに、学びながら新しいアイデアを探求することもできます。例えば、独創的な課題を与えることで、思考力を伸ばし、創造性の向上になります。

しかし、これらのツールで出されたアウトプットは、事実が捏造される可能性があるため、情報の事実を確認することが推奨されます。結果的にそれが、主体的に考える力を養うことにつながります。

これらのツールは、一貫性のある文章をうまく生成してくれるので、生徒がまずは越えなければならない試練を与えてくれます。教育の場では、より創造的な課題を提供し、生徒たちが持っている以上の力を発揮できる環境を作ることが大切です。
例えば、Koalluhのようなアプリでは、生徒や教師がAIを使って特定のキャラクターに基づいたストーリーを作成し、言語能力を向上させることができます。

教育関係者がジェネレーティブAIを取り入れる際に、想定される問題は？

その効果は明らかでが、教育者はこのテクノロジーを取り入れる際、その過程で何をすればよいかを知っておく必要があります。

ここでは、想定されるいくつかの問題について説明します：

データの個人情報保護

イタリアでは最近ChatGPTが禁止され、データの個人情報に関する懸念が広まりました。生成AIツールにデータを入力すると、生成AIのモデルはあなたのデータを使って自己学習します。

そのため、教育関係者や学生は、このような事態を防ぐために、氏名や所在地などの個人情報の提供を控える必要があります。または、セキュリティ対策が組み込まれているツールを利用すべきです。

偏向的、もしくは正しくない回答の可能性

ジェネレーティブAIツールは、学習させたデータと同じだけの性能しかありません。つまりデータが偏っていれば、結果も偏ってしまいます。

すでに教育関係者の44％がこの問題に関心を寄せているという結果も出ています。

例えば、学習と評価にAIツールを使っている場合、アルゴリズムが不明の要素に基づいて判断している可能性があります。特に個別学習が目的であれば、生徒によって変動要因が異なることがあまりにも多いのです。つまり、ADHDの生徒とそうでない生徒とでは、学習のプロセスも目標も異なります。

そのため、教育関係者は、そのツールがどのようなデータセットで学習され、どのように機能しているのかを事前に知っている必要があります。また、AIシステムを定期的に診断し、さまざまなデータセットを用いて学習しているかの確認をお勧めします。

使い方の理解不足

ジェネレーティブAIはまだ新しいテクノロジーなので、多くの教育関係者や学生はまだ十分な実践ができていないのが現状です。教育者は、そのメリットを最大限に生かすために、その成功事例、制約、長所を学ぶことに時間を割く必要があります。それがないと、何をどうすればいいのか、生徒を指導するのは難しいです。

そのため、定期的なトレーニングセッションを実施することが大切で、これらのツールの最善の方法を全員が理解することで、結果の質を向上させ、不正使用を回避することができます。

テクノロジーを取り入れるためのリソース不足

教育機関では、リソースが不足しがちです。81％の教師が、2021年から2022年にかけて業務量が増えたと回答しています。この数字は、今後の教師不足問題と共に、さらに増えていくでしょう。

ジェネレーティブAIがこの問題を解決してくれるかもしれません。しかし、導入コストが大きな課題となっています。多くの機関では、高額なツールを導入し、活用していく予算がないのではないでしょうか。その結果、世界の一部の地域ではデジタル・デバイド（情報通信技術（IT）の恩恵を受けることのできる人とできない人の間に生じる経済格差）の拡大が予想されます。

ジェネレーティブAIを取り入れて、教室を盛り上げよう

今後ますます教室でのジェネレーティブAIは必然となっていく中、教育関係者がその潜在的なメリットを無視して、余計な不安を抱くのはよくないでしょう。

個人情報保護問題、不正コピー、AIへの過度な依存に備えましょう。一方、このテクノロジーの基本を理解し、生徒だけでなく、自分自身の授業体験を向上させるために活用することもできます。

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